南京事件論争史 : 日本人は史実をどう認識してきたか. 増補

笠原十九司 著. 南京事件論争史 : 日本人は史実をどう認識してきたか. 増補, 平凡社, 2018.12, (平凡社ライブラリー ; 876). 978-4-582-76876-3. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I029363825


目次


はじめに/ 15

1 南京大虐殺事件(南京事件)とは/ 18

2 歴史事実はどのように解明されてきたか/ 22

3 戦後処理としてどう裁かれたか/ 24

4 南京事件をめぐる裁判訴訟とその結果/ 25

家永教科書裁判

名誉毀損裁判

5 なぜ南京事件の記憶・認識が国民に共有されないのか/ 28

第一章 「論争」前史/ 31

1 南京事件を知っていた政府・軍部指導者/ 32

発生と同時に報告された情報

陸軍中央の事件への対応

再発防止の方策

2 南京事件はなぜ記憶されなかったか/ 47

厳格な言論報道の検閲と統制

『生きてゐる兵隊』への弾圧

石川達三

徹底した証拠の焼却、隠滅

第二章 東京裁判「論争」の原点/ 55

1 なぜ南京事件が裁かれたのか/ 56

南京事件の訴因

2 どのように審理されたか――「松井石根獄中日誌」より/ 61

師団長への責任転嫁

弁護側の反証

明らかにされた司令官としての責任不履行

南京事件の根本的原因

3 判決は何を認定したか/ 74

判決文に反映したもの

パール判事も認定した事件の事実

立証目的ではなかった犠牲者数

松井の感慨

4 否定論の原点になった弁護側の主張/ 85

否定論の原形

5 なぜ「国民の記憶」にならなかったのか/ 96

南京虐殺事件の出版物

国民の記憶化プランの頓挫

国民に周知されなかった裁判記録

否定論受容の心理的基盤

「五五年体制」のなかで

第三章 一九七〇年代――「論争」の発端/ 111

『中国の旅』(朝日新聞社、一九七二年)

本多勝一

「まぼろし説」の登場

『南京事件』(新人物往来社、一九七二年)

洞富雄

『日中戦争史資料8 南京事件I』(河出書房新社、一九七三年)

洞富雄編

『日中戦争史資料9 南京事件II』(河出書房新社、一九七三年)

洞富雄編

『日本教について』(文藝春秋、一九七二年)

イザヤ・ベンダサン著||山本七平訳

『殺す側の論理』(すずさわ書店、一九七二年)

本多勝一

『私の中の日本軍(上・下)』(文藝春秋、一九七五年)

山本七平

『南京大虐殺―「まぼろし」化工作批判』(現代史出版会、一九七五年)

洞富雄

『ペンの陰謀―あるいはペテンの論理を分析する』(潮出版社、一九七七年)

本多勝一編

七〇年代に形成された「否定の構造」

第四章 一九八〇年代――「論争」の本格化/ 135

1 高度経済成長と国民の戦争認識の変化/ 136

ドイツとの違い

教科書問題の発生

家永教科書裁判

2 南京虐殺「虚構説」の登場/ 144

『パール博士の日本無罪論』(慧文社、一九六三年)

田中正明

『"南京虐殺"の虚構――松井大将の日記をめぐって』(日本教文社、一九八四年)

田中正明

『松井石根大将の陣中日誌』(芙蓉書房、一九八五年)

田中正明編

『南京事件の総括――虐殺否定十五の論拠』(謙光社、一九八七年)

田中正明

3 南京事件調査研究会の発足と研究の進展/ 150

『決定版 南京大虐殺』(徳間書店、発行現代史出版会、一九八二年)

洞富雄

『南京大虐殺」(岩波ブックレット43、一九八五年)

藤原彰

『南京への道』(朝日新聞社、一九八七年)

本多勝一

『天皇の軍隊と南京事件』(青木書店、一九八六年)

吉田裕

『南京大虐殺の証明』(朝日新聞社、一九八六年)

洞富雄

4 「証言による南京戦史」と『南京戦史資料集』/ 158

南京戦史編集委員会『南京戦史』(偕行社、一九八九年)

南京戦史編集委員会『南京戦史資料集』(偕行社、一九八九年)

南京戦史編集委員会『南京戦史資料集II』(偕行社、一九九三年)

5 加害証言・記録の公刊/ 163

『私記南京虐殺――戦史にのらない戦争の話』(彩流社、一九八四年)

曽根一夫

『続私記南京虐殺――戦史にのらない戦争の話』(彩流社、一九八四年)

曽根一夫

『南京虐殺と戦争』(泰流社、一九八八年)

曽根一夫

『わが南京プラトーン――一召集兵の体験した南京大虐殺』(青木書店、一九八七年)

東史郎

『隠された聯隊史――「20i」下級兵士の見た南京事件の実相』(青木書店、一九八七年)

下里正樹

『続・隠された聯隊史――MG中隊員らの見た南京事件の実相』(青木書店、一九八八年)

下里正樹

『南京事件 京都師団関係資料集』(青木書店、一九八九年)

井口和起||木坂順一郎||下里正樹編

6 「虐殺少数説」の登場/ 168

『本当はこうだった南京事件』(日本図書刊行会、発売近代文芸社、一九九九年)

板倉由明

『南京事件――「虐殺」の構造』(中公新書、一九八六年)

秦郁彦

『聞き書南京事件――日本人の見た南京虐殺事件』(図書出版社、一九八七年)

阿羅健一

第五章 一九九〇年代前半――「論争」の結着/ 179

1 戦後五〇年に向けた「過去の清算」への動き/ 180

戦争への反省の表明

2 南京事件資料集の発行/ 184

『南京事件資料集(1)アメリカ関係資料編』(青木書店、一九九二年)

南京事件調査研究会編訳

『南京事件資料集(2)中国関係資料編』(青木書店、一九九二年)

南京事件調査研究会編訳

『南京大虐殺を記録した皇軍兵士たち――第十三師団山田支隊兵士の陣中日記』(大月書店、一九九六年)

小野賢二||藤原彰||本多勝一編

『資料 ドイツ外交官の見た南京事件』(大月書店、二〇〇一年)

石田勇治編集・翻訳||笠原十九司||吉田裕編集協力

『南京の真実――The Diary of John Rabe』(講談社、一九九七年)

ジョン・ラーベ著||エルヴイン・ヴイッケルト編||平野卿子訳

『南京事件の日々――ミニー・ヴォートリンの日記』(大月書店、一九九九年)

ミニー・ヴォートリン著||岡田良之助||伊原陽子訳||笠原十九司解説

3 歴史書の発行/ 196

『南京大虐殺の研究』(晩聲社、一九九二年)

洞富雄||藤原彰||本多勝一編

『アジアの中の日本軍――戦争責任と歴史学・歴史教育』(大月書店、一九九四年)

笠原十九司

『南京難民区の百日――虐殺を見た外国人』(岩波書店、一九九五年)

笠原十九司

『南京の日本軍――南京大虐殺とその背景』(大月書店、一九九七年)

藤原彰

『本多勝一集23 南京大虐殺』(朝日新聞社、一九九七年)

本多勝一

『日中全面戦争と海軍――パナイ号事件の真相』(青木書店、一九九七年)

笠原十九司

『南京事件』(岩波新書、一九九七年)

笠原十九司

4 学問的に結着した「論争」/ 213

家永教科書裁判における勝訴

教科書記述の改善

第六章 一九九〇年代後半――「論争」の変質/ 221

1 「侵略戦争反省・謝罪」から「戦没者への追悼・感謝」/ 222

強調された「鞭打つ行為」と「犬死に」

「論争」の政治的変質

「南京大虐殺の嘘」キャンペーン

2 転機になった一九九七年/ 230

第三次教科書攻撃の開始

「つくる会」の結成

虐殺否定派の言論抑圧行動

南京大虐殺展示への圧力

映画『南京1937』上映妨害

出版社に右翼乱入

鹿児島県議会、南京大虐殺記念館見学に反対

漫画「国が燃える」削除・修正事件と小林よしのり『戦争論』

「百人斬り」名誉殿損裁判

3 南京大虐殺否定本のトリック/ 242

『「南京虐殺」の徹底検証』(展転社、一九九八年)

東中野修道

『「ザ・レイプ・オブ・南京」の研究――中国における「情報戦」の手口と戦略』(祥伝社、一九九九年)

藤岡信勝||東中野修道

『南京事件「証拠写真」を検証する』(草思社、二〇〇五年)

東中野修道||小林進||福永慎次郎

『南京事件――国民党極秘文書から読み解く』(草思社、二〇〇六年)

東中野修道

同書の二つのトリック

『「南京事件」の探究――その実像をもとめて』(文春新書、二〇〇一年)

北村稔

『南京「百人斬り競争」の真実』(ワック、二〇〇七年)

東中野修道

4 南京事件被害者からの聞き取り/ 264

5 中国における南京事件研究の環境と進展/ 267

第七章 二〇〇七年――「論争」の構図の転換/ 271

1 「教科書議連」による南京事件否定のための活動の開始/ 273

2 南京事件映画の上映阻止キャンペーン/ 271

3 世界における南京事件映画の反響/ 278

日本における自主上映の実施

4 南京事件70年国際連続シンポジウム――国際社会との連帯/ 282

5 日本政府の中枢になぜ南京事件否定派が存在するのか/ 286

『百人斬り裁判から南京へ』(文春新書、二〇〇七年)

稲田朋美

第八章 二〇一〇年代前半――「論争」の政治化/ 293

1 安倍政権による「日中歴史共同研究」とその成果の否定/ 294

報告書に見る南京虐殺事件の実相

国際的常識に反する安倍政権の日中歴史共同研究の否定

2 国会で公然と主張されるようになった南京事件否定論/ 300

南京事件の政府見解を教科書に書かせるように検定基準を改定

「政府見解」なるものを先取りした教科書

3 強化された南京事件の記述への教科書検定/ 304

第九章 二〇一〇年代後半――「論争」の終焉へ/ 309

1 「戦後七〇周年」、ドイツと日本の差/ 310

ドイツにおける「戦後七〇周年」

日本政府の「戦後七〇周年」

2 南京事件否定の立場を世界に曝け出したユネスコ世界記憶遺産登録への日本政府の対応/ 319

3 自民党歴史認識検証委員会の発足へ/ 323

4 南京事件否定派の通州事件へのシフト/ 325

否定派がもくろむ「憎しみの連鎖」の喚起

5 中国で開催された南京事件八〇周年国際シンポジウム/ 330

中国における南京事件研究の進展

分科会における報告と活発な討論

南京を世界に平和を発信する平和都市へ

歴史の「恨み」を人類和解の平和思想へ

日本の否定派の南京攻略八〇周年集会

6 『決定版 南京事件の検証』の出版――「論争」の終止符をめざして/ 338

おわりに――日本の首相が南京訪れることを望む/ 347

ポーランドのワルシャワ・ゲットー跡地を訪れたプラント西独首相

日本においては挫折した「過去の克服」の試み

「過去の克服」を困難にしている安倍政権

日本の首相が南京を訪れることに問題はない

あとがき/ 355

[年表]南京事件関係の書籍の出版/ 362



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