危険な毒花
常盤とよ子 著
『危険な毒花』
三笠書房
1957.
国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/pid/3030867
目次
危険な毒花
スカートをはいたカメラマン/p12
スカートをはいて、下駄をひつかけ、カメラを片手に、わたしはぶらつと赤線へ……誰もわたしの目的を知らない。
横浜真金町遊郭/p16
法華の太鼓と尼さんの行列にかくれて真金町遊郭へ一年に一度のわたしのチャンス……かなわぬときの仏だのみ。
覗くおんな/p20
ヒロポン窟にとらえた、わたしの決定的瞬間!しかしわたしは跣足になって必死で逃げた……
おこのみ焼屋/p25
夫は実直なサラリーマン、妻は洋パン、奇妙な共稼ぎ夫婦をみた「おこのみ焼屋」の二階に通いつめてながめた赤線風景
夫婦茶碗のある部屋/p31
真紅なカーテンに囲まれた彼女のお城、そこには家具が充満しておんなのはかない夢をうつしている……
わたしの散歩道/p58
わたしは彼女たちのカメラ屋さんだ。彼女たちの記念撮影が、わたしの散歩がてらの貴重な仕事場である……
白衣をまとつたカメラマン/p63
わたしは県立××病院へ―アイスキャンデーをくわえたまま入つて来た七人のおんなたち、白衣にかくしたわたしのカメラのシャッターは切られた……
本牧チャブ屋の夜/p72
特殊地帯の業者たち、わたしはその風丯のどこかに暗い決定的瞬間をとらえたかつたが、老女将からえたものは彼女の悲しい想い出だけだつた……
どこにいる青い鳥?/p103
「あたし××大学出よ」と自称する娼婦や幸福な家庭を夢みるおんなたち。彼女たちに青い鳥はいないのだろうか?
さまざまな娼婦/p111
彼女の夫は外国の船員だ。夫のいないあいだ古巣にもどつて稼いでいるU子の場合……
狂つた毒花/p119
そこに彼女たちの悲惨な旅路の果をみた。同性への哀憐のためか、わたしのシャッターは遂に切られなかつた。やはりカメラマンとしてよりも一人の若い女性としての自分をわたしはそこに見出した。
ファースト・フレックスからキャノンまで
アナウンサーからカメラマンに/p130
平凡なお嬢さんはいやだ。わたしは兄の友人Mさんに惹かれ、カメラマンに、一流の女流カメラマンになろうと決意したのだが……
われシャッターを切れり/p138
はじめての撮影会、わたしの愛機はファースト・フレックス……幸先のよい入選にこれならいけると……
観音さまのお賽銭/p141
深夜の六区探訪記。わたしは夜の女とまちがえられて掴まされた五百円札。
わが習作時代/p145
ハマをホームグランドに、わたしはうつしにうつした。しかし尊敬するMさんは結婚した。わたしの暗い一時期……
プロ作家への道/p168
わたしの初めての個展、十四種の現代版「働く女性」をうつしてみたが、Mさんのいうとおりわたし自分の職事をうつすのを忘れていた。
「働く女性」二態/p178
女子プロレスラー、ちんどんや、とわたしは同性のはげしく生きる姿に非情なレンズを向けたのであるが、そこにも生きる現代女性の哀歓があつた。
ヌード撮影会/p184
「女」の二人いる男だけの世界―そんな感じで、わたしはヌードをうつす男性の姿態にカメラを向けてみた。
「困つたお嬢さん」/p189
プロカメラマンになつたわたくしも、なんとはなしにまだお嬢さん、スカートをはいて最初の失敗。
わたしの前のひとすじの道/p193
わたしはわたしを押しすすめるしかない。わたしは赤線地帯から、さらに一歩すすめて彼女たちの更生施設へカメラを向けた。
幸福への入口のある家
わたしの暗い感傷/p198
はたして彼女たちの更生は可能なのだろうか?わたし自身も確信はなく、その答えはわたしのカメラが答えてくれると考えて……
洋間と日本間のおんなたち/p228
「日本間は優等性のお部屋というわけ」と寮母さんは言つていた。ベッドルームにいる彼女たちはまだ、かつての暗い記憶が生々しいのだろうか?
むすびに/p238
あとがき/p243
コメント
コメントを投稿